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2005/05/17(火)
平家伝説☆浪漫飛行5 〓桜坂〓
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ぼくらは大渡ダムをあとにして、R33を今度は北東へ向かう。 道路は右に左に緩やかな曲線を描き、アップダウンを繰り返す。 いちおう幹線国道なのに、対向車とすれ違うことがほとんどない。
後方から3台のバイクがぼくらの軽トラに近づいてきて、道路が直線になったところでゆっくりと追い越してゆく。 彼らは背中にディーバッグを背負い、バイクの後部にも大きな荷物を積み込んでいる。 ナンバープレートを見ると、四国ではめったに見ることのない「川崎ナンバー」だ。 気の合うライダー仲間で、楽しい旅をしているのだろう。
綿菓子のような真っ白い雲が、水色の絵の具を塗ったような空を東へ東へと泳いでゆく。 窓を全開に開けると、さわやかな高原の風がいっぱいに吹き込んできて、ぼくらの心を洗ってくれる。 視界はすべて緑の山々。 どこまでも続く山道。 民家もなければ、人影もない。
つい大声で歌ってしまうのは、やはりあの曲!
ぼくらの自由は♪ ぼくらの青春は♪ 大げさにゆうのならば♪ きっとそうゆうことなんだろう♪ ≪奥田民生イージュー☆ライダー≠謔閨
それにしても、あと15キロが遠い。 間違えるはずのない道を間違えたんじゃないか? そう思い始めた頃、やっと川口交差点が見えてきた。 この交差点の東側にある吾川村役場を越えると、すぐに『ひょうたん桜』の案内標識がある。 桜集落への入口はここだ。
案内標識に従い国道を左折し、ホッとする間もなく右にハンドルを切ると、道路にでっかい『桜』の文字を発見! 福山雅治に教えてあげたい・・・これがホントの桜坂!
ぼくは、こんなにもくだらない発見が嬉しくてたまらず、すぐさまクルマを停めて、デジカメのシャッターを切ろうとした。 彼女はそんなぼくを、ビミョーに呆れ気味の笑顔で見ていた。 が、身構えたぼくの横をたまたま他のクルマが通りがかり、ぼくが慌ててデジカメを背中の後ろに隠したのを見て、「がはは」と大笑いをした。
「そんな笑うなよ!」 「だって、ゆうやくんの仕草がおかしくて・・・」 「あんなとこ写真撮ってると思われたら、チョ〜恥ずいでしょ」 「バレバレだよ。あのオジさん、変な顔してジロジロ見てたから」
「やっぱりなあ。で・・・おまえは恥ずかったのか?」 「ちょっとだけ」 「はっきりゆうなよ」 「エヘヘ・・・ゴメンなさい」
◇ ◇ ◇ ◇
ぼくらは桜坂をどんどん登ってゆく。 が、彼女の顔からも笑顔がどんどん消えてゆく。 浪漫溢れる桜坂などと、優雅なことを言っている場合じゃなくなったのだ。
道は極端に狭く、対向車がやってきても離合なんかできっこない。 電動アシスト付きの自転車でも、果たして登るのだろうかと心配になるほどの急勾配だ。 しかも、ところどころガードレールがなくて、林があるから少しは気が紛れるが、ナビゲーターシートの左はまっ逆さまに谷底なのだ。 相当怖いのだろう・・・彼女がぼくの左手にしがみ付いてきた。 ギヤチェンジのジャマにはなるけど、かわいくてうれしくて、そのままゆっくりゆっくりと進む。
5〜6キロも登っただろうか。 急に視界が開け、桜集落が小さく見えてきた。
「やっと着いたぞ!」 「ホントに?」 「うんっ!ほら、ジイちゃんが生まれたとこだ」 「すご〜い!こんな山奥にちっちゃな村があるんだね〜♪」
ぼくの祖先は何百年もの間、この場所で密やかに生きてきた。 でも、ささやかなしあわせを求めて、したたかに生き続けてきたんだ。
≪続く≫
▼続きはココ 第6話◆八百年ロマンス http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/rommel/?Y=2005&M=5&D=19
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[イメージ画像]は 福山雅治『桜坂♪』 ケータイ横向きで・・・ ▼さーさークリック▼
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