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2005/05/19(木)
平家伝説☆浪漫飛行6 〓八百年ロマンス〓
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吾川村のシンボルは、桜地区の空にそびえ立つ・・・高知県指定の天然記念物『ひょうたん桜』である。
花の見ごろは3月下旬から4月上旬にかけてであり、ぼくらが訪れた5月3日の時点で、空に浮かぶ花の雲≠拝めるはずもない。 だが、せっかく桜までやって来たのだから、この樹を間近で見ておきたい。
ぼくと彼女は公園の駐車場に軽トラを停め、誰も見ていないから照れることなく手をつなぎ、桜の樹の下まで歩く。 「ゆう坊、ジイちゃんが生まれた村にはなあ、有名なひょうたん桜の樹があるんじゃ」 ジイちゃんが自慢していたことを思い出す。 残念ながら、ひょうたん桜は黄緑色の美しい葉桜になっていたが、それでも急な斜面で圧倒的な存在感を示している。
樹の下に立てられている案内板を見ると・・・。 桜地区の始祖、大崎玄蕃が植えたとされる彼岸桜で、樹齢は優に500年を超えていて、樹高は30メートル、周囲6メートルもある。 堂々たる巨木だ。 花びらがあまり開かない性質で、花の形がひょうたん形であることから、特に『ひょうたん桜』と呼ばれるようになったそうだ。
村名を冠し『吾川のひょうたん桜』と呼ばれることもあるが、この案内板には地区名を冠した『桜のひょうたん桜』の名称で記されている。 桜出身者の孫としては、このことが非常に嬉しかったりするのだ。
なお、この地は元々「大薮」とゆう地名だったのだが、昭和の時代に『ひょうたん桜』にちなんで「桜」と改められたそうだ。
ぼくは桜の樹を見下ろす位置にあるベンチに座り、彼女も隣に腰掛けた。 二人してぼんやりと、巨大な葉桜とその向こう側に見える桜の集落を眺める。
ジイちゃんはこの桜に生まれ、育ち、幼なじみの女の子(バアちゃん)と恋をして、結婚をして、家族を残して戦争に行き、復員すると家族を連れて桜を出ていった。 ひょうたん桜は、若き日のジイちゃんの後ろ姿をいつも見守ってくれていたのだろう。 霧深い朝も、星降る夜も、無言で励ましてくれていたに違いない。
もしジイちゃんが桜でキコリを続けていたら、ジイちゃんの末娘の母ちゃんが、父ちゃんと出会うことはない。 ぼくがジイちゃんの孫として、この世に生まれてくることもなかっただろう。 別の場所、別の家に生まれたぼくは、これほど愛しい彼女と出会えぬまま、他の女の子と結婚するのだろうか。 そんなことは・・・とても考えられない。
ぼくと彼女が出会い、あっとゆう間に恋に落ちたのは単なる偶然なんかじゃない。 ぼくらが生まれるずっとずっと前から、よくゆう「赤い糸」で結ばれていたんじゃないか。 運命なんてずっと信じてなかったけど、いまはそんな気がする。
◇ ◇ ◇ ◇
ねえねえ、この前『五色浜伝説』と『桜伝説』の話をしたでしょ? 八百年前、俺とさやかがここで結婚したって話・・・。 ここでこうしてるとさー、なんか時の流れが止まってるみたいで、ホントにそうだったような気がしてくるよなあ。
うん、さやかも! ゆうやくんってロマンチストだから、嬉しいな。
エヘヘヘ・・・そうかあ? つーか、俺、照れ屋だから、新しい伝説をテキトーに、いや、マジで作って、おまえを喜ばせようと思ったんだ。
ありがとう。 さやかをずうっと大事にしてねっ♪
うん!! 800年も探してやっと巡り会えたさやかだから、そりゃあもう・・・大事にしまくってやるよ。
もうすぐだね、結婚式。 まだ夢見たい。
俺もだよ。
◇ ◇ ◇ ◇
ジイちゃんの山≠あとにしたぼくらは、西に傾く太陽を追いかけ、今度はジイちゃんの海≠ヨと向かう。
そこには、いつもと同じでっかい勇気の花≠ェ咲いていた。
おまえを愛してやろう。 必ず愛し続けてやろう。
島影に沈んでも絶対に燃え尽きることのない・・・あの夕陽のように。
日帰りだったけど、いい旅だった。
≪完≫
◇ ◇ ◇ ◇
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[イメージ画像]は ひょうたん桜の案内板 ケータイ横向きで・・・ ▼さーさークリック▼
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