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2005/08/08(月)
4階のないマンション ―後編―
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まだ読んでない人は、こっちから先に読んでねっ♪ ↓―前編―↓ http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/rommel/?Y=2005&M=8&D=7
◇ ◇ ◇ ◇
それから5時間が経過。 午後8時頃、ぼくのケータイに再配達の依頼が入った。 住所を聞くと、古井マンションだった。 どうやら探していた部屋は、ぼくが予想した部屋だったようだ。 「きたっ!あそこ、夜は怖そうだなあ」 一瞬そう思ったけど、これは肝試しなんかじゃない。 仕事なんだから、イヤでも行かねばならない。
そして、イヤな仕事こそ先に片付けたい主義のぼくは、さっそく古井マンションに急行した。
草ぼうぼうの駐車場に軽トラを停め、恐るおそる暗闇の世界に降り立つ。 建物に目をやると、まばらに部屋の明かりが点灯していた。 数個の光が、この大きな建物がまだ廃墟ではないことの証明であり、なによりも心強く感じられた。 しかし、今にも朽ち果てそうなこの建物に、どんな人が住んでいるんだろう?
4階≠ナエレベーターを降り、503号室のドアを叩くと、50歳ぐらいと思われる女性が出てきた。 笑顔に愛嬌があって、ずいぶん人懐っこいオバちゃんだった。 「暑いのに何度も来てもろてゴメンね」 オバちゃんはそうゆうなり、缶ジュースを1本手渡してくれた。 「ありがとう!いただきます。このマンションには4階がないんやね」 ぼくがそうゆうと、オバちゃんが疑問に答えてくれた。 「昔はあったんよ。この部屋はね、403やった。この階で自殺した人がおって、それから503になった。ほやけど、エレベーターはそのままなんよね。ここ来るんは今日が初めて?」 「うん。昼間来たとき、なんか変やなあって思た」
いつ頃、どの部屋で、何歳ぐらいの人が、どんな理由で自殺したんだろう。 聞けば教えてくれそうだった。 でも、そうゆうことは聞くべきじゃないし、知らないほうがいいのかも知れない。
「この荷物送ってくれたんが従姉妹で、今は東京に住んどるんやけど、昔のままの部屋番号で送ってくるんよ」 「あっ!それで403なんや・・・」 謎はすべて解けたっ! 「びっくりしたろ?部屋がないけん。お礼の電話したときにでも、住所録を直してくれと伝えとかないかんね」 「うん・・・。ちょっとビビッた」 「誰も取って食うたりせんけん大丈夫やって!」 一人暮らしの女性みたいだけど、明るい人でよかった。 何回か来ているうちに、仲良くなれそうだ。
こうゆう人が住んでいるとわかると、気色悪かった古井マンションにも光が射しているように見えるから不思議だ。 気の持ちようでイメージは変わる。
◇ ◇ ◇ ◇
ところで、キミが住んでいるマンションに4階はありますか? 104、204、304・・・の部屋番号はありますか?
「ないぞ!」と気づき、ちょっとだけ焦っているキミへ・・・。 それは新築のときからないのですか? ある時期からなくなったのですか?
新築のときから4階がなくても安心はできません。 建築工事中に携わっていた方が亡くなり、急きょ4階をなくした。 そんなマンションがあることを知ってますか?
◇ ◇ ◇ ◇
今回は「高層の死角/森村誠一」ふうなイメージで書いてみました。 もちろんノンフィクションです。
森村誠一の作品のなかでは、ぼくは1997年11月初版の「人間の証明Part2―狙撃者の挽歌―」が好きです。 ありえそうだけど、ゼッタイにありえないヤクザの話。 構成員たった7人の山瀬組が、1万人の巨大組織に敢然と立ち向かってゆく勧善懲悪の物語です。 老組長、山瀬五郎がめちゃくちゃカッコよくて、ガラにもなくちょっとだけグレかけていた当時のぼくは高校生ごころ≠ノ憧れたものです。 全国の中古本屋さんで、絶賛発売ちゅう♪ 400円以下なら即買い≠ナすよ。
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