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2005/09/13(火)
美しい現代国語 ―漢字を使いこなすには―
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女優の夏目雅子さんが亡くなってから、今年でちょうど20年らしい。 ぼくは生きていた頃の夏目雅子さんの美しい笑顔を知らない。
しかし、1996年春、フジフィルムのCMで松田聖子の「あなたに逢いたくて」の曲に乗せて、コピー機のなかから出てくる美女の写真を発見! それが夏目雅子さんだった。 すでに故人だったとも知らず、両耳を引っぱってヘン顔している写真に胸をときめかせたことを覚えている。
夏目雅子さんは白血病によってわずか28歳で亡くなる前年、作家であり芸術家の伊集院静さんと結婚した。 そのエピソードは有名で、いろんなところで紹介されている。 食事にいったレストランで、絶世の美女が「薔薇」とゆう字を正確に書いた伊集院さんを尊敬し、ただそれだけのことで結婚したいとまで思ったそうだ。 結婚なんて大事なことを、そんな簡単に決めるなよっ!(笑)
現在のようにパソコンが普及するずっと前の話である。 バラとゆう字を漢字で書ける男が尊敬されたとしても、ある程度しかたのない時代だったのかも知れない。
いまだとこんな簡単にはいかない。 薔薇と書けなくても、パソコンのワープロソフトが書いてくれる。 ぼくら若者の間でひらがなとカタカナが見直されているいまなら、「ばら」とか「バラ」と書いたほうが可愛げがあったりする。 「鬱陶しい」とマジメに書くよりも、「うざってぇ〜!」と書いたほうがはるかに伝わりやすかったりもする。
ホント便利な時代になったもんだ。 現代国語の乱れに顔をしかめてばかりいるより、節度を保ってうまく使えば表現力がアップするのだから。
しかし、どんな時代になっても、きちんと書かなければいけないものがある。 それは人の名前だ。
たとえば「くさなぎ」さん。 芸能人の草なぎ剛さんの「なぎ」とゆう漢字を正確に書ける人は、あまりいない。 弓偏を書いて右上に前、その下に刀と書く・・・すると「函廚箸罎・惜なる。」
草塙笋気鵑力辰箸牢愀犬覆い韻鼻⊂・形亜△椶・蓮屬・気覆・廚気鵑里・陲慍拱・鯑呂韻砲い辰拭」 が、留守だったので、受取人の名前をご不在連絡票に書かなければならなかった。 同じ「くさなぎ」さんでも、この人の場合は「草薙」さん。 「薙」とゆう字はさほど難しくはないが、普段使わない漢字だから、スラスラとは書けない。 草冠を長くした「難」の字を書いて、「くさむず」さんで納得してしまう・・・。 しかも、配達票を見ると、あまりにも達筆すぎてよく分からない。 さらに、表札はかかっていなくて、郵便受けにも名前が書かれていない。
そこで、ぼくはひらがなで書くことにした。 カタカナだと音だけ強調して感じさせる良さがあるけど、なんか無機質で乾いた音が響きそうだ。 それに比べて、ひらがなには優しさが溢れているような気がするからだ。
再配達に行ったとき、初老の女性からこう言われた。 「まちがった字を書かれるより、ひらがなで書いてくれたほうがええね。やっぱり名前やけん」 なるほど!おっしゃる通りだ。
さて、国語学者の金田一春彦さんがこんな言葉を残している。 「漢字の一番の長所は、大体の形ができていれば分かるとゆう点だ」 確かにそうだ。
でも、21世紀はちがう。 手書きで文書を作成する機会がどんどん減っている時代だから・・・ 「漢字を使いこなすには、変換ミスをしないこと。とくに人名は正確に!」 そうゆうことになるんだろうか。
もうひとつ、ぼくがこだわっているのは、漢字と仮名のバランスだ。 たとえば、「いまきみにとどけ!」とゆう短い文章。 「今君に届け!」と書くと、文学的なこだわりが感じられず非常に寂しい気がする。 ところが、「いまキミに届け!」と書いたらどうだろう。 ひらがな、カタカナ、漢字の組み合わせによる視覚効果で、とたんに躍動感が溢れてくるから驚きだ。
同じように、「いまかえるよ」とゆう会話文。 「今帰るよ」よりも「いま帰るよ」としたほうが、じわっと深い愛情を伝えられるように思える。
念のために書いておくけど、これはあくまでも私見である。 個人的にこう思っているとゆうことであって、普遍的に正しいと説教するつもりはない。
時代の移り変わりとともに、言葉もまた変化してゆく。 同じ日本語を使いながら、でも優しさに包まれ、読む人を元気にさせる文章を書ける人になりたい! そんな気がする今日このごろ・・・。
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