【青春交差点】
 
いつもどんなときも。ぼくはぼくらしく。
 
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2006/02/01(水) 約束のグッジョブ!
 
真冬なのに、リップスライムの「楽園ベイベー」をエンドレスリピートで聴きながら書いています。


仕事仲間のヒデ(ヒデキ)が風邪をひいて熱を出し、今週月曜日から今日(水曜日)まで3日間休んだ。
これは先週のぼくと全く同じパターンで、ただしヒデの場合はインフルエンザではなくて風邪ひきだから、ぼくが移したとゆうわけじゃないようだ。

今日も雨・・・3日連続の雨だった。
まだ真っ暗な早朝5時45分、ぼくらを乗せた送迎車がヒデの家まで迎えにゆくと、ヒデは透明の傘を差し玄関先にしゃがんで待っていた。
古い2階建ての家のすぐ前にクルマが停まると、ヒデがだるそうに近づいてきた。
「すいません。まだ熱が抜けきらんけん、もう1日だけ休ませてほしいんですけど・・・」
運転手であり班長のマサオさんが窓から顔を出し、いかにも申し訳なさそうな顔をしているマサオに言った。
「まだしんどそうやのう。まあしょうがない。明日はなんとか出れるようにせいや」
ヒデは精気のない笑顔を作って答えた。
「はい。明日は必ず出ます」
クルマはすぐに走り出し、振り返ったぼくの目にお腹のあたりを押さえて歩く細すぎるヒデの姿が映った。

現場に着き、作業員詰所に入った。
ヒデが今日も休むと知った親方は、大きくため息を吐いたあとで冷たく言った。
「あいつはホントに野良じゃのう。もうええ。ヒデキいらんわ。明日からもう来んでええ」
マサオさんが驚いて聞き返した。
「えーっ?マジっすか?」
ぼくも悪い冗談だと思ったけれど、親方は本気だった。
「おお!クビや、クビにする。誰か、帰りにあいつの家行って伝えてくれ。一番仲良しやったんは誰や?ゆうやか?」
突然指名されて、ぼくはびっくり仰天だった。
「そんな・・・ぼくにはそんなこと言えませんよ」
即座に断わったけど、受け付けてもらえなかった。
「頼む!悪いけど行ってくれ」
親方の眼光には有無を言わせない威圧感があった。

3日間降り続いた雨は昼過ぎには上がり、久しぶりの青空が広がったけれど、ぼくの心は憂うつだった。
仲間から口々に「今日は元気ないな」と言われた。
そりゃそうでしょ?
誰だって仲間にクビを言い渡すなんて、喜んでできることじゃない。
ガキの使いほど無邪気にはできっこないんだ。

あとにイヤなことが待ち構えているときほど、あっとゆう間に仕事が終わる。
皮肉なもんだ。
ぼくは一度帰宅してからヒデの家に行った。
大事な用件で来たことを伝えると、ヒデは自分の部屋に通してくれた。
あまりにも汚い部屋だったから、よけい憂うつになった。

いきなり用件を切り出すのも気が引けて、どんなCDを聴いているのか・・・と、そんな話題を振ってみた。
ヒデはリップスライムの大ファンで、それはそれは熱く語ってくれたけど、ぼくは残念ながら「楽園ベイベー」のシングルしか持ってないし、それ以外の曲をまともに聴いたことがない。
仲良しとゆうほどでもない関係のぼくらの会話はすぐに途切れた。

いちおう病気で休んでいるヒデの部屋に長居してはいけないと思い、しぶしぶ切り出そうとした。
「つーか、俺が来たんはねえ・・・」
そこまで言ったとき、ヒデがぼくの話を制止した。
「わかってたんや。俺がクビだってことを言いに来たんでしょ?あいつに無理やり頼まれて・・・」
ぼくはうなずくのが精一杯だった。
なんだか泣きそうになって、何も言えなかった。
「俺、仕事がとろいやろ?ほやけん、どこへ行ってもイジメられて、すぐクビにされるんや」
「・・・・・・」
「また新しい仕事探さないかんなあ」

親方はヒデのやることなすこと全てに文句をつけた。
怒られるのはいつもヒデばかりだった。
ほかのみんなは親方に逆らえず、そんなヒデを笑い者にしていた。
ぼくにはヒデが精神的にマイっていたのがわかっていた。
なんとか認めてもらおうと歯をくいしばって仕事をしていたし、仕事が遅いのはサボっているわけじゃなくて、物覚えと要領が悪いからだってこともわかっていた。
それなのに、いつもぼくの隣にいたがるヒデをうざいと感じたこともあったし、助け舟を出してやることもできなかった。
休憩時間や昼休み、居場所がなさそうな顔でタバコを吸っているヒデにたびたび話かけた程度のことだ。

ぼくが玄関を出ようとするとき、ヒデが言った。
「ゆうや、ありがとう。ホントは俺、風邪なんかひいてない。あそこにはもう行かんと決めとったんや」
ぼくは胸が詰まりそうだった。
「すげぇ演技派やな!けど、月曜日にヒデが休むと聞いたとき、なんとなくそうじゃないかなあって・・・」
それを聞いてヒデが笑った。
肩の荷をおろしたような笑顔だった。
ぼくはヒデに謝った。
「ゴメンな。おまえのことジャマそうにしたときもあったでしょ?こんなことになったけん、なんか悪いことしたなあと思うんよね」
ヒデは首を横に振った。
「そんなことないよ。俺なんかに話しかけてくれるんはゆうやだけやったけん、それだけでもうれしかったよ」
それを聞いて、ぼくはたぶん柳葉敏郎みたいな顔でうなずいたと思う。


がんばれ!ヒデ。
キミを必要としてくれる場所が必ずあると思う。
「これでおしまいにしない」って約束したから、今度ゆっくり遊びに行くよ。
そのときにはリップの『グッジョブ!』貸してよね!
2泊3日で返すから・・・。

 


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