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2006/04/05(水)
南ウイング11番ゲートB
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3月31日、間もなく正午。 ぼくらは桜木町で電車を降りた。 たまたまここが終点の電車だったためか、大勢の人々が降りた。 同年代の子の比率が異常に高いように思えた。 ぼくには奇抜に見える自由なファッション、アイドル風な髪型、それぞれの茶髪。 都会の子に比べると、どこをとっても普通なぼく。 彼らの目にぼくはどう映るんだろう。 イケてなくて古めかしいやつなのかも知れない。 「どうでもいいや」 それはちょっと強がりで、ホントは気になっていたりする。
ぼくらは、また手をつないだ。 地元にいるときには、あまり人前で手をつながないのに。 遠い青空の下にいる開放感だろうか。 でも、地元に帰ってからも同じようにできそうな気がしてきた。
桜木町の駅を出ると、左前方にランドマークタワーがあった。 「うわあ!」 圧倒的な高さを前にして言葉が出ない。 引き寄せられるように近づいてゆくと、タワーの真下あたりに帆船のマストが見えた。 「日本丸だっ!」 去年11月、松山観光港で見た2代目日本丸の母。 これが初代日本丸。 うれしくて涙が出そうだった。 マストの色が違う以外は娘と瓜ふたつに見えた。 たぶん同型船に違いない。
デジカメとケータイの両方を使って、夢中で写真を撮りまくった。 ぼくの横顔を呆れた笑顔で、でも、飽きることなく見守ってくれている彼女がかわいかった。
日本丸メモリアルパークを急ぎ足で見学したあと、ぼくらは500メートルも続くボードウォークを歩いた。 旧国鉄の廃線後を利用したこの道は、「汽車道」と呼ばれているらしい。 半円形の真っ白いビルと大観覧車が目を引いた。 記念に乗ってみたかったけど、今回はパスした。 次回は絶対に乗ってやる。
それにしても、桜がちょうど満開! ぼくらを待ってくれていたかのようだった。 並木に仕掛けられたスピーカーから流れてくるBGMが、耳に心地よかった。 最先端のカッコよさの中にもレトロな美しさを忘れない、そんな横浜の雰囲気にぴったりだった。
道路に示されたマークで、ぼくらが歩いている道が「開港の道」とゆう散策コースだと気づいた。 ここは世界有数の港町、みんなが憧れる横浜なんだ。 少し歩くと、左手に赤レンガ倉庫が見えてきた。 優しい青空を背にして鮮やかだった。 外観があまりにもきれいだから、明治末期の建物には見えなかった。
ぼくらはさらに南に歩いた。 「海に向かって変てこな道路があるな」 そう思っていたら、どうやらそれが大さん橋のようだった。 個性的と言えば個性的な構造物だけど、ぼくには怪獣ガメラの甲羅にしか見えなかった。 そのガメラに向かって大勢の若者が歩いていた。 だから、ぼくらも山下臨港線プロムナードから誘い出されて、左に曲がることにした。
しかし、どこから行けばいいのか、すぐにはわからず立ち止まってしまった。 そのとき、ぼくらのすぐそばに老婆がいた。 原ひさこに似た「日本のおばあちゃん」って感じの老婆だった。 少しだけ背が丸くなってはいるが、元気に散歩をしているようだった。 「どこへ行きたいの?」 老婆のほうから声をかけてくれた。 渡りに船だった。 いや、横浜だから大さん橋に豪華客船って感じ。 「あそこ行きたいんですよ。あの黒いの・・・・大さん橋ですか?あれが」 ぼくはたどたどしく訊ねた。 「そうよ。教えますから、わたしについてきて」 そう言った老婆はかつて教師だったのかも知れないと、ふと思った。 「はい」 素直についてゆくことにしたけれど、老婆の歩みが遅いから、おんぶしてあげようかと何度も本気で迷った。 小さくて上品な背中を見ていると、だんだん愛しくなってきたからだ。
「ここの階段を下りるとすぐ大さん橋の道に出るからね」 老婆は立ち止まり、分岐点を指差しながら言った。 ぼくらはお礼を言って、ついでに四国から来たことを告げた。 老婆はなぜか感心した様子だった。 階段の下で、彼女が振り返った。 老婆はまだ階段の上にいた。 彼女が胸のところで小さく手を振った。 老婆が手を振り返してくれた。 ぼくも照れながら手を振った。 今度は老婆がお辞儀をしてくれた。
すぐ大さん橋に着いた。 大学の生協の腕章をした人たちがビラを配りながら、たくさんの学生を大さん橋の屋上へと誘導していた。 ビラは受け取らなかったけど、何か催し事をしていたのだろう。 不意にガメラの正体がわかった。 港湾施設と桟橋と芝生の公園と、それにボードウォークが一体化したような構造物! たぶん計算され尽くした結果の曲線と直線が驚きだった。
東の海を横浜ベイブリッジがまたいでいた。 優雅で華麗で繊細で、さすがベイブリッジの教祖! 長渕剛の『ベイブリッジ』って曲を思わずうなってしまった。 西の海には夢の近未来都市「みなとみらい」が浮かんでいた。 陸地だけど、ぼくにはそう見えた。
(続く)
◇ ◇ ◇ ◇
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【イメージ画像】 初代日本丸♪ ↓ゼッタイクリック↓
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