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2005/04/30(土)
仁義より金集め?
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JR福知山線脱線事故の報道が連日紙面を賑わせている。この事故は国鉄だったなら起こらなかっただろう。分割民営化され、私鉄となったJR西日本だからこそ起きたのだ。単なる民営化ではなく、分割することで各社に叩き合いをさせることも命取りとなったのではないか。貪欲に利潤を求めた結果、限界を超えた操業をしていたのだろう。
そもそも企業とは利潤を追求するもの。路線の集客を上げるために、スピードアップや極限まで本数を増やす企業努力をするのは当然だし、利用者にとっても有難いことである。安全が約束されるのであればという条件付きでの話しだが。JR西日本の組織の中ではすでに危うい空気は存分に漂っていたようだが、あれほど巨大な組織の中では、個人の意見や社会的良識などは無力だろう。私も職員だったなら、組織に従って無理を承知で業務にあたっていただろう。それが嫌なら組織を出るしかない。
私の友人の働くビジネスホテルでは、経営者側から常に稼働率100パーセントに迫るよう求められるという。どうしても空室が埋まらない時期や日にちがあるため、稼動する日は100パーセント以上で回さないと数字は上がらない。昼下がりに男女でチェックインし、ベッドやシャワーだけ使って2人揃って退出した部屋は、2、3時間経って戻らなければもう来ないと見て素早くバッシングをしてその部屋に次の客を入れるという。もしその男女が遊び回った末に終電に間に合わず帰ってきたら、もしくは別の部屋で設備などにトラブルが発生きたら、100パーセントで稼動させていれば代わりの部屋はないのである。
運転士が足りないから飲酒した運転士を黙認して乗務させるバス会社もしかり、前の客が残したパセリやキャベツを次の客に再利用したり、床に落ちた食材を使う外食産業もしかり、体調が悪いのに指名だからと接客させる風俗店もしかりである。飲酒運転は事故に直結するし、衛生管理が万全でなければ食中毒の危険を孕むし、体調がすぐれないときは抵抗力が弱まり、疾病を蔓延させることにもなりかねない。
マスコミを名乗る報道機関もしかり。テレビ朝日系の報道で亡くなった運転士がブレーキを握ったまだの姿だったと報道していたが、TBS系の報道では、発見した救急隊員がはっきりと、ブレーキを握っていた事実はないと言ったことを報道した。朝日系の報道は初めから脚色だったのは明らかだ。遺族に向かって「現在の心境は」などと尋ねることもそうだが、面白おかしくドラマ仕立てで報道して、少しでも部数や視聴率を伸ばし利潤追求する大企業の姿である。誰も知りたくない犠牲者の個人情報、たとえば人柄や家族との逸話を全国にばら撒き、肝心の事実の情報が得られない紙面を埋めている。報道された個人情報は単なる踏み台で終りである。
むかしのヤクザには仁義があったが、今は人集めも座布団の高さも金次第になったとよく嘆かれている。その筋だけでなく、この社会全体が金集めの社会になり、ときにこうしてとんでもない事故が起こる。むかしの鉄道員には風格や誇りのようなものを感じたものだが、今の鉄道員にそれを感じないのは、一介の企業の手先という悲壮感を感じるからかもしれない。
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