日常日記
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2005/07/06(水) 仰いで天に愧じる
久しぶりに餅を焼いて磯辺焼きなんぞを食べていると、口の中でゴリッとした違和感を感じた。賞味期限が切れかけて冷蔵庫の中でひからびた餅だったから固いのかと思いきや、一応噛まずに取り出してみると、差し歯が1本抜け落ちていた。

瞬間、また歯医者へ行かなくてはとも思ったが、また型を取ったり、合わせるために削ったり、歯の根元に薬を入れたり、それを確認するレントゲンを撮ったりでまた1万ばかりの出費になることを思ってうんざりし、自分でくっつけることにした。出費もかさむが、何日も歯医者へ通うのも鬱陶しい。

歯を磨き、口を入念にゆすいだのち、瞬間接着剤で接合した。接着剤は釣具屋や量販店での安売りでおなじみのツリロンアルファである。簡単に外れる歯を簡単にしかも安物の接着剤でくっつけながら、まるで自分の人生を象徴しているかのような安っぽさだとうんざりした。土台からしっかりしてないものを、安物で上塗りし、ボロが出ればその場凌ぎで誤魔化している。

この思いは、しっかりした職業に就くことや、幸せな結婚をすること、物質的に豊かになったりすることなどで満たされるものではない。小さい頃からしっかりと毎日綿密な歯磨きが出来る子であれば、床の目地までみっちりと雑巾がけできる人間になっただろうし、ちゃんとした人と食事に行っても引け目を感じない箸づかいができただろうし、考え方や行動が根幹からしっかりとした人間になっていただろう。日々の生き方の浅さを改めない限り意味がないことだし、今からそれが間に合うかどうかもわからない。

日々の行動が一流でないのなら、せめて日々の苦悩くらいは一流の深さで悩んでみようか。絶望や苦しみを綿密に辿らなければ湧き出ない希望や悦びもきっとあるだろう。口の中に広がる安物のボンドの匂いや、いまひとつ噛み合せがしっくりしなくなったことよりも、安っぽい自分を考えさせられることの方がずっと不快に感じる1日である。


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