日常日記
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2006/06/23(金) さようなら
少し前から青森旅行を計画していたが、その目当てのひとつはある温泉旅館にあった。
それは秋田県北にある大滝温泉という地の旅館で、20年近く前の学生の頃、ある日ふと雪景色の温泉に行きたくなり泊まったのだ。本当に素寒貧の頃で、交通公社の時刻表の巻末の旅館のリストで、交通公社と日観連の印のついた宿の中で最も安いその旅館を見つけた。他は全て1泊2食付で1万円なのに、そこだけ8千円からになっていた。

今では行程の記憶はおぼろげになってしまったが、旅館の記憶は鮮明に残っている。通された部屋はストーブで温めてあり、窓からは雪景色の米代川が見え、求めていた雪景色の温泉がそこにあった。夕食は初めて経験する部屋食で、夜はきりたんぽや岩魚など予算以上に豪華だった。若かりし私はお櫃の中のご飯を全て平らげると、翌朝の朝食のお櫃にはずっしりとご飯が詰められていた。さすがに完食はできなかったが、その心遣いを有難く感じた。朝食には大ぶりの鶏のモモ肉が何枚もあり、今でも生涯の中で豪華な朝食のうちのひとつだ。今思えばあれは名産の比内鶏だったのだろう。とにかく美味かった。

帰りは旅館から駅まで、雪の中車で送ってもらった。旅館の設備や浴場はどちらかというと質素で地味、送迎の車も自家用の軽ワゴン車だったが、心温まる接客の方に好感を持った。いつか働くようになったら、きっとまた泊まろうと心に決めていた。

数年前に一度北東北への旅行を計画したとき、その旅館に電話をし変わらぬ宿泊料金を知り良心的であることを再認識したが、厳しい台所事情の気配も察してはいた。そして今回調べてみると、廃業してしまったことを知った。電話してみると4年前の冬に閉められたそうで、過去に泊まった客かと聞かれた。今でも電話があるのかもしれない。主人らしき声が耳に届くと、20年前がそのまま甦ってきた。やおらJTBの時刻表を開いてみると、かつて十数軒も旅館の名前があった大滝温泉の欄に、現在はたった2軒しか宿の名がない。

大滝温泉は県内で最も歴史があり、東北では3番目に古い温泉らしいが、現在残った旅館は8軒のみ。約20年前に訪れたときからひなびた空気は漂っていたが、この厳しいご時世は山奥の温泉を直撃しているようだ。ただ門扉を開けているだけではお客は呼び込めない時代とはいえ、あの良心的な宿の主人の電話口での温かい東北訛りを思い出すと複雑な心境だ。

というわけで今回の青森旅行は見送ることにした。数年前に無理してでも行っておくべきだったと少し後悔した。大滝温泉の第一旅館、私の中では最高の旅館だった。


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