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2008/12/06(土)
脈絡無きSS
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「伯爵」 ルージュを佩いたばかりの艶めいた唇を、無表情のまま動かして目の前の男を呼ぶ。 「何ですか?」 一つに結った長い髪を翻して、男振り返ると、何故呼ばれたか解らないという様に言う。 「解ってるくせに」 「何がです」 人形の様に、表情を動かさず言い募るその様を、面白そうにくつりと笑って、その小さな手を引くと、ドレスがさらりと心地よい音を立てる。 「伯爵なら引く手数多だろうに、何でわざわざ夜会のパートナーを、女装させてまで僕にするんだい? こんなことしてるから、少女嗜好とか言われるんだよ」 熱を感じさせない、深緑の瞳に男を映すと、男はさっと跪くと、引いていた小さな手にくちづけを落とす。 「貴方が隣りいる時が一番楽しいからですよ 私の白磁姫(ビスクドール)」
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