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2006/01/06(金) 真剣な理髪師 その2
 以前にロンドンのリージェント・ストリートの床屋にふらっと入った。
古びた堅い皮の理髪台とボウタイをした理髪師に惹かれたのだ。
理髪台は仕掛け椅子になっており、地下に落ち、そのまま肉屋へ直行・・・なんて(ホラーの「スウィーニー・トッド」)ふと思い出すほどよい感じだ。
 私は旅行者で、たぶん二度と来ないかもしれないが、「髭だけでも剃ってほしい」
というと、その主人は「構わない」あなたは日本からここへ髭だけ剃りに通いたくなるだろう
と言う。にこりともせずに言ったのでジョークなのかどうかわからなかったが、
果たして剃り心地は素晴らしかった。
ものすごく薄い諸刃のゾーリンゲンの剃刀がテーブルに並んでいるのが目に入り、
肌を滑る刃の冷たさと共に、微かな恐怖と緊張が薄い皮膜のように顔を覆う。
規則的に小刻みに剃られる人中の髭、大鎌でのライ麦刈りのように大胆に剃られる
頬の髭。ヴァイオリンの弓のような動きで剃刀を操る理髪師にされるがまま。
最後に焦げた薬草のにおいのローションが塗られ、主人は最後まで笑わず、
「おしまい」と言った。


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