|
2005/05/14(土)
涙でファインダーが見れない
|
|
|
朝から神戸に向かう。 いつもならメインのまつりは日曜日だが、今年から土曜日になっている。 10時過ぎにサンバの会場に到着。 サンバは12時開始なのだが、もう場所取をしているカメラマンが大勢いる。
メインフェスティバルが終わり、知り合いのおまつりカメラマンからメリケン波止場跡で夜のステージイベントがあるよと教えられる。 プログラムに載っておらず、直前に作られたであろう1枚物のガイドに小さく「来てのお楽しみ」とだけ書かれていた。
始めに東京ディズニーランドのキャンペーンで、ミッキーやミニーが引き連れてきた楽団と踊ったりして、ちょっとしたTDLのステージが再現されていたが、神戸まつりが商業主義的営業にに利用されている様で気分がよくない・・・
ミッキー達が舞台から降り、ディズニーランド仕様のステージが白一色の背景に戻されて次は地元のダンススクールのダンスが始まる。
今年は1月17日の震災から10年になる・・・
ダンスも、その10年を忘れない様にと作られたオリジナルのものだとアナウンスががあった。
ステージでは色々な服装をした人々が軽快なリズムに乗って踊っている・・・ これはよくある、街の活気を表現しているシーンだろうなと思う。 ここでステージの両袖から踊りながら男女が出てきて、街での突然の出会いが表現されてラブストーリーが始まるのが定番。
だが踊りながらの男女が出て来る事も無く、不意に突然の暗転。 音も途切れて、ダンサーも全員倒れた状態でスモークが流れはじめる。 背景に微かに赤い照明が当てられて、1月17日が表現される。
音楽が変わり、何人かが立ち上がる。 立ち上がった者は、隣で倒れている者が立ち上がるのに手をかす。 そして白い服のダンサーが現れ、倒れている者の間を駆け回り 立ち上がる手助けをする・・・救急を表現していると感じる。 ひとりだった白い服のダンサーの数が増え、国旗が入っているものも混じっている・・・外国からのレスキューだ。
周りに大勢の観客が居るが、当時の事を思い出して泣いてしまった・・・ 涙でファインダーがよく見えない・・・
舞台の上で、立ち上がる事無く倒れたままの者が多く居た演出も哀しい・・・ あの日の出来事で、約6000人の人間が死んだのだ。
シーンが変わり、作業服に身を包んだダンサーの登場。 街の復興を踊っている。 プロジェクトXにも取り上げられた、六甲道駅の奇跡なんかを思い出す。 ここでも記憶を刺激され、少し泣いてしまった。
最後のシーンで、10歳以下のキッズ達が登場。 この子達は震災の記憶の無い世代なのだ。 この世代が将来、新しい神戸をつくっていくのだろう・・・ だから、その記憶と学んだものを伝えなければならない。
そしてフィナーレ。 震災の記憶を忘れない!という作り手の意図は充分以上に成功していた。 出きれば思い出したくない記憶も呼び覚まされたが、それがインパクトとなって、「忘れない」に力を与えている。 それより何より・・・感動した。
間にダンスやよさこいのステージがが入って、ゴスペルの歌声にのせて、レザーを使ったステージが始まる。 日も暮れて、海から冷たい風が吹いてくる。
レーザーで頭上に海面が再現される。 まるで海の中から海面を見上げている様に思える。
ゴスペルの歌声に合わせて波がゆっくり形を変える。 波の下に、震災10年目のメッセージがレーザー光で書かれては消えていく。 ふと振り返って、海洋博物館の特徴のある屋根を見上げると、そこにも光の粒が現れ、弾け、消えていく。
メリケンパーク全体がレーザーの光に覆われている。 高速道路の壁面まで光りが届いている。 頭上の水面、踊る光の粒・・・その中に紅い光りがゆっくりと動いている。 紅い光は、震災で失われた命を表しているのだろうか・・・ ステージで鎮魂を表には出していないが、これは素晴らしい鎮魂の儀だ。 寒いなか、ゴスペルという退屈な筈のステージだが、誰も帰ろうとしていなかった。
まつりを楽しみながらも、震災10年を思い起こさせるいい内容だった。
<写真> 夜のステージのフィナーレ・神戸港メリケンパーク
|
|
|
|