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2004/03/24(水)
影に立つ不思議/山南純平
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本番まで10秒前!・・・これより1日を秒の単位に切り替えます。
むかし(20年くらい前?)、宇土市民会館で「スマイリングドール」という劇をした時、照明技術さんから何度も念を押されたことがある。 「本当にこれでいいのですか?」 顔が影になったり、背景に影が映ったりして照明の基本からするとデタラメな設定になっていたのだ。 100本以上あるライトを10本しか使ってないのだから非常識な照明設定に見えたのは当然である。 しかも生明かりはほとんどなく、赤と青を4本ずつ。
わたしが舞台上で影にトリツカレタのは演劇のイロハもわからなかった学生時代のことだった。 小さな教室で公演をした際、窓を段ボールで遮断し、照明器具がなかったためロウソクを缶に立て明かりを作った。 揺らめく足元からのほのかな明かりの中、役者の存在感よりも影が大きく動きはじめたのだ。 その時も他の大学の演劇部や新劇の方からは悪評だったが、演出家や一般の方からは絶賛をうけた。 劇の内容よりも、ロウソクの明かりが作り出す影についてお客さん同士で終演後、議論がはじまった。 まさかこんな反響があろうとは計算外の結果に驚いたのは当の本人たちだったのである。
わたしはアレ以来、舞台上に現れる影を計算するようになった。 ひとりの役者の背後に何百人かの影が映し出されるまで、精神的肉体的そして技術的な思いつきを続けている。
闇が見える世界、影のある劇、これがわたしの演劇であると密かに思っている。
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